【かんたん解説】トライアル雇用

まあ、とりあえずまずは一定期間、働いてみませんか?

というタイトルの案内チラシの制度。トライアル雇用について簡単に解説します。

トライアル雇用制度とは

障害者トライアル雇用制度は、障害のある方々が職場での実務体験を通じて、自分に合った仕事かどうかを判断できるようにすると同時に、事業主が労働者の適性や能力を直接確認できる機会を提供するために設けられた制度です。

この制度は、障害者雇用の促進という社会的な課題に対する具体的な解決策の一つとして、厚生労働省により推進されています。

制度の期間と特徴

トライアル雇用の期間は、一般的には3ヶ月から6ヶ月の範囲で設定されます。この期間中、障害のある方は実際に職場で働きながら、職場の環境や仕事内容、同僚との関係性などを体験します。

事業主側もこの期間を利用して、障害のある方の職務遂行能力や職場への適応状況を観察し、継続雇用の可能性を検討します。

特に精神障害者に関しては、トライアル雇用期間を最長12ヶ月まで設定することが可能であり、この期間延長は、精神障害特有の調整が必要な場合に柔軟に対応できるようにするためです。

また、障害者短時間トライアル雇用という制度もあり、週20時間未満からの勤務を開始し、徐々に勤務時間を増やしていくことができます。

制度の利用方法

トライアル雇用を利用するためには、まず事業主がハローワークにトライアル雇用の求人を出し、障害のある方がこれに応募します。選考を経てトライアル雇用が開始され、期間終了後には、双方の合意のもとで正式な雇用契約へと移行することができます。

トライアル雇用制度は、障害のある方々にとって自分に適した職場を見つける貴重な機会を提供し、事業主にとっては障害者雇用に対する不安を解消し、適切な人材を確保する手段を提供します。

この制度を通じて、障害者雇用の促進と職場の多様性・包摂性の向上を目指しています。

障害者トライアル雇用制度は、障害のある方々が一定期間、実際に職場で働くことを通じて、自分に合った仕事かどうかを見極めるとともに、事業主が労働者の適性や能力を確認できるようにするための制度です。

この制度は、障害者雇用の不安を解消し、継続雇用へのスムーズな移行を目指しています。

制度のメリット

求職者側のメリット

障害者トライアル雇用制度は、障害のある方々にとって、職場環境や仕事内容を実際に経験することで、自分に合った仕事を見つける絶好の機会を提供します。この制度を利用することで、以下のような具体的なメリットがあります。

自己理解の深化:実務を通じて自分の能力や適性、働き方の好みを深く理解できます。

職場適応のスキル向上:実際の職場での体験を通じて、コミュニケーション能力やチームワーク、職場のルールへの適応など、職場生活に必要なスキルを身につけることができます。

不安の軽減:トライアル期間中は、正式な雇用に先立って職場を体験できるため、就職後の不安を大幅に軽減できます。

以上のようなメリットがあるので、トライアル雇用で働く人は、安定して長く働き続けられる傾向があります。

事業主側のメリット

事業主にとっても、障害者トライアル雇用制度は多くのメリットをもたらします。特に、障害者雇用に関する不安や課題を解消し、適切な人材を確保する上で大きな助けとなります。

適性の確認:トライアル雇用期間を通じて、障害のある方の具体的な能力や職場での適応状況を直接観察できるため、継続雇用の判断に大きな確信を持つことができます。

助成金による経済的支援:助成金の支給により、トライアル雇用期間中の経済的負担が軽減され、障害者雇用をより手軽に試すことが可能になります。

職場の多様性と包摂性の向上:障害のある方を職場に迎え入れることで、従業員間の理解と協調が深まり、職場全体の多様性と包摂性が向上します。これは、企業文化の豊かさを増すだけでなく、社会的責任(CSR)の実践としても高く評価されます。

トライアル雇用の利用促進

これらのメリットを踏まえると、障害者トライアル雇用制度は、障害のある方々にとっても、事業主にとっても、双方にとって有益な制度であることがわかります。

障害のある方々が自分に合った仕事を見つけ、充実した職業生活を送るための一歩となり、事業主は適切な人材を見つけると同時に、職場の多様性を高めることができます。

障害者トライアル雇用制度の積極的な利用は、障害者雇用の促進だけでなく、より包摂的で多様性に富んだ社会の実現に向けた重要なステップです。

制度のデメリットと検討事項

求職者側にも事業者側にもメリットの多いトライアル雇用ですが、デメリットも考えられます。

  1. 準備と管理の手間
    事業主側の課題
    :トライアル雇用を実施するには、事前の準備や期間中の管理が必要になります。

    これには、適切な職務の選定、職場環境の調整、定期的な評価やフィードバックの提供などが含まれ、特に小規模事業所ではこれらの手間が負担となる場合があります。
  2. 期間終了後の不確実性
    求職者側の不安:トライアル雇用期間終了後に正式な雇用に移行できるかどうかは、期間中の評価に大きく依存します。このため、求職者にとっては期間終了後の不確実性が精神的な負担となることがあります。
  3. 助成金の条件と制限
    助成金の複雑さ:助成金を受けるための条件や手続きが複雑であり、すべての要件を満たすことが難しい場合があります。また、助成金の支給額や期間には限りがあるため、事業主が期待する経済的な支援を完全には得られない可能性もあります。
  4. 職場への適応とサポート体制
    適応の課題:障害のある方が職場にスムーズに適応するためには、適切なサポート体制の構築が必要です。しかし、事業主が障害者雇用に関する十分な知識や経験を持っていない場合、効果的なサポートを提供することが難しくなることがあります。
  5. 期間限定の雇用と心理的影響
    期間限定の雇用:トライアル雇用は期間限定であり、その期間だけで正式な雇用が保証されるわけではありません。この一時的な雇用状態は、求職者にとって不安定さを感じさせ、職場への帰属意識やモチベーションに影響を与える可能性があります。
  6. 対策と考慮点
    これらのデメリットや課題に対処するためには、事業主と求職者双方が制度の内容を十分に理解し、期間中のコミュニケーションを密にすることが重要です。

    また、事業主は障害者雇用に関する研修を受ける、専門のコンサルタントや支援機関と連携するなどして、職場環境の改善やサポート体制の充実を図ることが望まれます。

障害者トライアル雇用制度は、障害のある方々の雇用機会を拡大し、職場の多様性を促進するための有効な手段ですが、その成功は事業主と求職者双方の理解と協力に大きく依存しています。

制度の利用を検討する際には、これらのデメリットや課題を踏まえた上で、適切な準備と対策を行うことが重要です。

対象者と流れ

障害者トライアル雇用制度は、障害のある方々が新たな職場での就業を検討する際に、その適性や職場環境に自身が適応できるかを試すための枠組みを提供します。

対象者

障害があり※、以下の①から④のいずれかに当てはまる方が対象になります。 ※ 障害者手帳を所持していない場合でも、障害がある方であれば対象に含まれることがあります。 ご自身が対象者に当てはまるかどうかは、ハローワークの窓口でお尋ねください。

① これまでに働いたことのない職業に挑戦してみたい方 紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望していること

② 離転職を繰り返し、長く働き続けられる職場を探している方 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返していること

③ 働いていない期間がしばらくあったが、再び就職しようと考えている方 紹介日の前日時点で離職期間が6か月を超えていること

④ 重度身体障害、重度知的障害、精神障害のうちいずれかのある方 (④の方は、①~③の要件に関わらず、障害者トライアル雇用の対象になります。)

流れについて

以下のステップで進行します:

求人情報の提供:事業主がハローワークにトライアル雇用の求人を出します。

応募と選考:障害のある方が求人に応募し、事業主による選考が行われます。

トライアル雇用の開始:選考を通過した方が、事業主とトライアル雇用契約を結び、実際に職場で働き始めます。

評価とフィードバック:トライアル期間中、定期的に職場の適応状況や仕事の適性について評価が行われ、フィードバックが提供されます。

継続雇用の決定:トライアル期間終了後、双方の合意のもとで正式な雇用契約へと移行します。

トライアル雇用の助成金が拡充されました

助成金の支給

この制度を利用する事業主には、助成金が支給されることが大きな特徴です。助成金は、トライアル雇用期間中の障害者の給与の一部を補助するもので、事業主が障害者雇用に対する経済的な負担を軽減できるように設計されています。

助成金の拡充

平成30年4月以降、精神障害者に対する助成金の支給額と期間が拡充され、より多くの事業主が障害者雇用を検討しやすくなっています。

この変更は特に、精神障害者を対象とした雇用において顕著で、助成金の支給額が月額8万円×3か月に増額され、助成期間も最長6か月まで延長されるなど、事業主が障害者雇用をより積極的に行うための経済的支援が強化されました。

これにより、事業主は障害のある方々を雇用する際の初期コストを大幅に軽減でき、障害者の職場へのスムーズな適応と長期的な雇用の促進が期待されます。

まとめ

障害者トライアル雇用制度は、障害のある方々にとって、自分に合った職場を見つけるための貴重な機会を提供します。また、事業主にとっても、新たな人材を発掘し、職場の多様性を高めるための有効な手段です。

助成金の拡充により、経済的な負担が軽減され、より多くの事業主がこの制度を利用しやすくなりました。障害者雇用の促進は、単に法的な義務を満たすだけでなく、社会全体の多様性と包摂性を高めるための重要なステップです。

事業主と障害のある方々がこの制度を最大限に活用し、互いにとって有益な関係を築いていくことを心から願っています。

障害者トライアル雇用制度は、障害のある方々にとっても、事業主にとっても、多くのメリットをもたらします。障害者雇用の促進という社会的課題に対して、実践的な解決策を提供するこの制度の活用を、ぜひ検討してみてください。

参考資料:
「障害者トライアル雇用」 のご案内(求職者向け)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000103780.pdf

「障害者トライアル雇用」 のご案内(求職者向け)
https://www.mhlw.go.jp/content/000562055.pdf

障害者トライアル雇用に関する助成内容を拡充しました
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000200888.pdf

この記事を書いた人

アイ・ワークス 田村 義邦