代表の田村です。先日こんなご相談をいただきました。「今までも短期間の転職を繰り返しているので、今度こそ長く安定して働ける仕事を探したい。一人での就活は不安なので、就労移行で訓練と支援をして欲しい。」
この方は、実際に見学も体験もされて、ご本人も利用に前向きでした。が、しかしここで問題になったのが、訓練期間中の生活費でした。
残念ながら自立訓練(生活訓練)や就労移行支援では給料や工賃は原則支給されません。そのため自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を利用中に必要な生活費の目途がつかず、自立訓練(生活訓練)や就労移行の利用を断念せざるを得ないと言う方が今までも多くいらっしゃいました。
そんな方々のために、ここでは自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を利用中の生活費を、まかなうための方法を紹介します。
代表的は、方法は以下の5つです。
それぞれを詳しく説明していきます。
失業保険
過去に就労経験がある方の多くがこの方法を選択しています。
失業保険の給付額は働いていた時の給与の50~80%程度です。その額で不足する場合は、いままでの貯金等で補うことになります。
例えば仮に月給20万円だった人は、失業保険の給付額は16万円程度です。
失業保険の受給については2点注意があります。
1点目は、失業保険は障害のある人は「就職困難者」として150~360日まで給付日数が延長されますので5~12か月は失業給付を受けられますが、就職困難者として認定されなかった人は90~330日、つまり3~11か月と短くなります。
失業保険を受給しながら自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を利用することを検討している方は自分が受給できる日額や日数を確認することが必要です。
2点目は、自己都合で離職した場合は申込をしてから3か月間失業保険が給付されない期間があり、実際に自分の受給できるまで最初の手続きから4か月弱かかります。
その期間は別の方法で生活費をまかない、生活しなければなりません。ただし自己都合でも障害のある就職困難者や体力の不足、心身の障害などで離職した「特定理由離職者」は給付制限が免除され、手続き後すぐに失業保険が給付されます。
申請の際には忘れずに障害があることや離職理由をハローワークの担当者に伝え、給付制限が免除されるかどうか相談してください。
失業保険受給の手順
① 離職した企業から離職票受け取り
② ハローワークで求職申し込み(受給資格決定)
③ ハローワークで受給説明会に参加
④ ハローワークで失業認定(初回)に参加
⑤ 雇用保険を受給 (以後は、④⑤を繰り返し)
詳しくは、よくある質問(雇用保険について)-ハローワークもご覧ください。
手続の概要:雇用保険手続きのご案内
具体的な手続:雇用保険の具体的な手続き
ご両親・ご家族からの援助
今まで、いちども就労経験のない方はご両親やご家族から生活費を援助してもらいながら就労移行支援に通う方が多いです。自分の貯金を切り崩して就労移行支援に通っている方と比べると生活に安定感は大きく、腰を据えて職業訓練や就活に取り組めます。
しかし、一方、いつまでに就職しないと生活が成り立たなくなるという期限が明確でないため、「働かなくては」という目的意識や意欲があいまいになってしまう方も中にはいらっしゃいます。
ご家族からいつまでに就職して欲しいと期限を切られていなくても、就職活動を計画するときには「1年以内には就職する」など具体的な目標を自ら立てて、目標実現のために就活のサイクルを回し続けていくことが大切です。
障害年金
失業保険やご家族からの支援と合わせて、同時に障害年金を受け取ることも可能です。ただし、障害者手帳を持っている方、すべての方が障害年金を受給できるとは限りません。障害者手帳の申請とは別に改めて審査が行われます。また、障害者手帳よりも障害年金の方が認定基準が厳しい事が多いです。
また医師の診断書の他にも作成が必要な書類が多く、申請するハードルも高いです。社労士などの専門家に相談するというのも1つの方法です。アイ・ワークスでもご相談ご質問をお受けしています。
初診日(障害の原因となった傷病について、初めて医師等の診療を受けた日)に厚生年金に加入していれば障害厚生年金、国民年金の場合は障害基礎年金の対象です。
初診から1年6ヶ月を過ぎた日に障害の状況が定められた1~3級の状態に当てはまっていて、かつ保険料を一定以上納めていれば受給することができます。
障害年金の等級は障害者手帳の等級とは必ずしも一致しません。年金額は障害等級によって異なります。申請手続きは年金事務所・自治体の窓口、共済組合で行います。
障害年金受給の流れ
①初診日を確認してから年金事務所・自治体の窓口で相談する
②年金請求書などの書類を年金事務所・自治体の窓口に提出する
③年金証書・年金決定通知書が自宅に郵送される(却下の場合は不支給決定通知書)
④年金証書が届いてから1~2か月後に受給できる
【参考】障害基礎年金を受けられるとき(日本年金機構)
【参考】障害厚生年金を受けられるとき(日本年金機構)
各種給付・貸付金
上記の方法では就労移行支援を利用している間の生活費が足りないという場合は、自治体や社会福祉協議会が行っている給付金・貸付金の制度も利用できます。給付金(もらう)と貸付金(借りる)の違いに注意が必要です。
制度 | 内容 | 対象者 |
---|---|---|
生活福祉資金貸付制度 (緊急小口資金) | 緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に、少額の費用の貸付を行います。 | 新型コロナウイルスの影響を受け、休業等 により収入の減少があり、緊急かつ一時的な 生計維持のための貸付を必要とする世帯 |
生活福祉資金貸付制度 (総合支援資金) | 生活再建までの間に必要な生活費用の貸付を行います。 | 新型コロナウイルスの影響を受け、収入の減少や失業等により生活に困窮し、日常生活の維持が困難となっている世帯 |
住居確保給付金 | 市区町村ごとに定める額を上限に実際の家賃額を原則3か月間(延長は2回まで最大9か月間)支給します。 | 離職・廃業後2年以内である場合。個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合。就労意欲がある方。 |
臨時特例つなぎ資金貸付制度 | 10万円以内 | 住居のない離職者であって、離職者を支援する公的給付制度(失業等給付、住宅手当等)又は公的貸付制度(就職安定資金融資等)の申請を受理されており、かつ当該給付等の開始までの生活に困窮している方 |
生活保護
生活を支えるための資金に目途が立たない場合は、生活保護を受給することも検討してみてください。就労移行支援を利用して就職が決まった後も、短時間勤務などで給与が定められた額より低い場合は生活保護費との差額を受け取ることができます。その後、収入が増えれば受給を終えることもできます。
受給できる金額は、世帯の人数やお住まいの地域によって決まっています。障害者手帳をお持ちの方は加算がついて月1~2万円支給額が増えたり、就労移行支援に通う際の交通費が支給されたり、医療費が本人負担なしになったりする場合もあります。
生活保護受給の手順
①お住まいの自治体の福祉事務所・役所に相談に行く
現在の状況の聞き取り
②生活保護を申請する
・実地調査(家庭訪問など)・資金調査・扶養可否調査・社会保障、収入調査・就労可能性調査等
③生活保護費支給(申請より原則14日以内)・収入状況申告(毎月)・訪問調査(年数回)・就労指導等
【参考】「あなたも使える生活保護」パンフレット(日本弁護士連合会)
【参考】生活保護制度(厚生労働省)
番外編:アルバイト
よく「アルバイトをしながら自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を利用できますか?」と質問をいただくのですが、アイ・ワークスの近隣の自治体は自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を利用しながらアルバイトすることを認めないところがほとんどです。
いくつかの自治体では、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援を利用しながらアルバイトがを許可しているところもあるようです。その場合は就労移行支援利用中の生活費の一部をバイトで稼ぐこともできますが、就職するためには、職業訓練や就活に力を入れて取り組む必要があります。
しかし、アルバイトが忙しく訓練や就活に十分な時間が取れなくなってしまうと、2年間という時間に限りのあるサービスを有効に活用できずに時間だけが過ぎてしまうこともあるので、注意が必要です。
万一アルバイトをする場合には、生活に必要な金額と自分の体力を考慮した上でアルバイトの量を決めるようにしましょう。
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