障害福祉サービスを使おうとしたとき、こんな言葉を聞いたことはありませんか。
市の窓口でそう案内された。事業所からそう説明された。だから、計画相談を付けるのが当たり前だと思っていた。
僕も、ついこのあいだまでそう思っていました。
でも、それは制度の正確な説明ではありません。本人が希望すれば、「セルフプラン」という別の道を選べます。これは私たちの解釈ではなく、法令と国の通知に明確に書かれている事実です。
今日は、この「選べるはずなのに、知られていない道」について、根拠のある情報と、兵庫県内の実際のデータをもとに整理します。読み終わるころには、ご自身やご家族がどちらを選ぶべきか、判断するための材料がそろっているはずです。
まず結論:サービス利用に計画は必須。でも「誰が作るか」は選べる
障害福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援、生活介護、放課後等デイサービスなど)を利用するときには、必ず「サービス等利用計画」が必要になります。ここは動かせません。
ただし、この計画を誰が作るかについては、制度上ふたつの道が用意されています。
- 計画相談支援:相談支援事業所の相談支援専門員が計画を作る
- セルフプラン:本人または保護者が、自分で計画を作る
「計画を付けないとサービスが使えない」は正しいのですが、「相談支援専門員を付けないとサービスが使えない」は誤りです。ここを混同すると、本来選べたはずの道が見えなくなってしまいます。
「本人がセルフプランを選べる」3つの根拠
「選べると言われても、本当に大丈夫なの?」と不安になる方もいると思います。ここは曖昧にせず、根拠をはっきり示します。
① 障害者総合支援法施行規則 第12条の4
「申請者が希望する場合」または「身近な地域に指定特定相談支援事業者がない場合」にセルフプランを提出できる、と明文化されています。これが最上位の法令根拠です。例外的な裏ワザではなく、制度が最初から想定している正規の選択肢です。
② 相談支援に関するQ&A 問50(令和7年3月18日・最新版)
国はこう述べています。要点を私の言葉でまとめると—
「利用者本人が作成するサービス等利用計画案(セルフプラン)は、申請者が希望する場合又は身近な地域に指定特定(障害児)相談支援事業者がない場合に、指定特定(障害児)相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案に代えて提出することができるものであり、利用者が希望していないにも関わらず市町村がセルフプランの提出を求めることは厳に慎むべきものである。(法施行規則第12条の4参照)」
裏を返せば、本人が希望している場合、市町村はそれを拒めないということです。
相談支援に関するQ&A 問50(令和7年3月18日・最新版)
③ 厚生労働省事務連絡(平成26年2月27日)
セルフプランそのものを、国は「障害者本人(又は保護者)のエンパワメントの観点からは望ましいもの」と評価しています。つまり、自分のことを自分で決めるという福祉の根っこにある考え方を、国自身が後押ししているわけです。
この3つが重なっている以上、「本人はセルフプランを選べる」は、制度上、疑う余地のない事実です。
国は「両方向の押しつけ」を、どちらも禁じている
ここが、いちばん誤解されやすいところです。
「望まないセルフプランをゼロにする」という国の目標を聞いて、「じゃあセルフプランは良くないものなんだ」と受け取ってしまう方がいます。でも、それは正反対です。国が問題視しているのは、本人の意思を無視した押しつけであって、セルフプランそのものではありません。
国がダメだと言っているのは、次のふたつです。
① 自治体が、体制不足のツケを本人に回すこと
相談支援事業所が足りないからといって、安易にセルフプランへ誘導する。厚労省は平成26年の事務連絡で、こうした「手抜き」を明確に問題視しています。
② 本人がセルフを希望しているのに、計画相談を事実上強制すること
これがQ&A問50の言う「厳に慎むべき」案件です。市町村が「できれば計画相談をお願いしたい」とお願いするのは構いません。でも、本人がセルフを選んだのにそれを拒むのは、制度の趣旨に反します。
要するに国のスタンスは一貫しています。本人の意思で選ばれたものなら、計画相談もセルフプランも、どちらも正しい。問題なのは、本人が置き去りにされることだけです。
「望まないセルフプランゼロ」—国の最新の動き
2025年10月1日の社会保障審議会・障害者部会で、厚生労働省は「望まないセルフプラン」の解消を正式に議題に上げ、第8期障害福祉計画(2027年度〜)において「2029年度末までに望まないセルフプランの件数をゼロにする」を成果目標として提案しました。
ここで言う「望まない」とは、身近に相談支援事業所がなく、やむを得ず本人が計画を作っているケースを指します。自分の意思で選んだセルフプランは含まれません。審議会でも「本人や家族が希望して選んでいるケースを完全に否定すべきではない」という意見が出ており、この区別ははっきり維持されています。
明石市・兵庫県内のデータが語る「実態」
ここからが、制度の建前と現場の実態の話です。
明石市の担当者が語ったこと
先日、市役所を訪ねたとき、明石市の担当者から直接こう聞きました。
「明石市も計画相談を付けることを強要はしていない。セルフプランを選ぶこともできる。が、出来る限り計画相談を付けることを勧めているし、お願いもしている。」
制度の建て付けとしては、正確な説明です。「強要しない」は法律どおり。ここに嘘はありません。ただ、数字を見ると、その「建前」と「実態」のあいだに、無視できない距離があることが見えてきます。
兵庫県内の自治体比較(令和6年3月末時点)
厚生労働省「各自治体の支給決定者(児)数とセルフプラン率」による、兵庫県内の主な自治体の比較です。数字は「計画相談を付けている人の割合」ではなく、セルフプランが使われている割合として読んでください。
| 自治体 | セルフプラン率(障害者) | セルフプラン率(障害児) |
|---|---|---|
| 神戸市 | 49.8% | 88.3% |
| 西宮市 | 38.7% | 66.6% |
| 姫路市 | 5.8% | 16.7% |
| 宝塚市 | 0.2% | 0.1% |
| 伊丹市 | 0.7% | 0.0% |
| 加古川市 | 0.4% | 0.0% |
| 尼崎市 | 0.0% | 0.0% |
| 明石市 | 0.0% | 0.0% |
厚生労働省「各自治体の支給決定者(児)数とセルフプラン率(令和6年3月末時点)」
同じ兵庫県内でありながら、神戸市・西宮市はセルフプランが当たり前の選択肢として機能している一方、明石市は令和6年3月末時点でセルフプラン利用者が実質ゼロです。
「強要はしていない」という発言と、この0.0%という数字。制度上「選べる」はずのセルフプランが、明石市では事実上機能していなかったことを、データが示しています。誰かが悪意で隠したわけではないのかもしれません。けれど、窓口の案内が「計画相談を前提とした説明」だけになっていれば、利用者にとって選択肢は存在しないも同然です。
※このデータは令和6年3月末時点の公表値です。厚労省は今後、市町村ごとの最新値を順次公表していく方針のため、最新の数字はご自身の自治体名とあわせて確認することをおすすめします。
【実用ガイド】利用者・ご家族のための判断と手続き
ここからが、この記事のいちばん使ってほしい部分です。「で、自分はどうすればいいの?」に答えます。
どちらが正しい・偉いという話ではありません。状況によって、向き不向きがあります。
計画相談(相談支援専門員に頼む)が向いている方
- 初めて障害福祉サービスを使う/制度がよくわからない
- 複数のサービスを組み合わせて使う予定がある
- 体調や状況が変わりやすく、定期的に計画を見直したい
- 関係機関(病院・学校・職場など)との調整を専門家に任せたい
- 計画づくりの書類作業に不安がある
相談支援専門員は、継続してアセスメントを行い、サービス担当者会議で関係機関をつなぎ、モニタリングで計画を定期的に見直してくれます。支援が複雑なほど、この専門性は大きな力になります。 そして、本人の費用負担は原則ありません(公費で運営されています)。
セルフプランが向いている方
- すでに安定した支援体制があり、状況がはっきりしている
- 自分のことは自分で決めたい・把握したい
- 使うサービスがシンプルで、調整の必要が少ない
- 身近に相談支援事業所がなく、待っていると利用開始が遅れてしまう
国自身が「エンパワメントの観点から望ましい」と認めている道です。「自分で書くなんて難しそう」と感じるかもしれませんが、様式は各自治体が用意しており、記入例も公開されています。
□ 市の窓口(明石市なら福祉総務課・障害福祉課)でサービス利用を申請する
□ 「計画相談を希望します」と伝える
□ 相談支援事業所を紹介してもらう、または自分で探して契約する
□ 相談支援専門員と面談し、サービス等利用計画案を一緒に作る
□ 市が支給決定 → 受給者証が届く
□ サービス事業所と契約して利用開始
□ 以降、定期的にモニタリング(計画の見直し)を受ける
□ 市の窓口でサービス利用を申請する
□ 「セルフプランで申請します」とはっきり伝える
(※施行規則第12条の4に基づく正規の選択肢です、と添えると確実)
□ セルフプラン用の様式(サービス等利用計画案)を受け取る
□ 「いつ・どのサービスを・どれくらい使うか」を自分で記入する
– 困っていること
– 達成したい生活の目標
– 利用したいサービスと頻度
– 1週間の生活スケジュール
□ 記入した計画案を市に提出する
□ 市が支給決定 → 受給者証が届く
□ サービス事業所と契約して利用開始
言いにくいときは、このまま口に出してみてください。
- 選択肢を確認したいとき 「計画相談とセルフプラン、どちらも選べると聞きました。両方の違いを教えてください」
- セルフプランを希望すると伝えるとき 「制度上、本人が希望すればセルフプランを選べると理解しています。セルフプランで申請したいです」
- やんわり計画相談を勧められて、迷っているとき 「いったん持ち帰って、どちらにするか考えてから決めたいです」
- どちらがいいか相談したいとき 「私の状況だと、どちらが向いていそうか一緒に考えてもらえますか」
どの言い方も、対立するためのものではありません。「選択肢を正しく知ったうえで、自分で決めたい」という意思を伝えるための言葉です。
支援者として、私たちが大切にしていること
最後に、日々障害者支援の現場に立つ立場として、書いておきたいことがあります。
支援者が守るべきことは、シンプルに2つだと思っています。
ひとつは、「計画相談を付けなければサービスは使えない」という、事実と異なる説明をしないこと。 もうひとつは、「セルフプランという選択肢がある」ことを、必要な方にきちんと伝えること。
制度上の権利として「選べる」ことを知らなければ、その選択肢は、その人にとって存在しないのと同じです。選択肢を伝えてはじめて、支援は本人のものになります。
制度を知らないことで、選べるはずの道を失う人を、ひとりでも減らしたい。アイ・ワークスは、明石市・神戸市で障害福祉と就労支援の現場から、こういう情報を発信し続けています。
「自分の場合はどうなんだろう」と思った方は、お気軽にご相談ください。計画相談を付けるべきか、セルフプランで進めるべきか、あなたの状況に合わせて一緒に整理します。
まとめ
- サービス利用に「計画」は必須。でも「相談支援専門員」は必須ではない
- セルフプランは制度上の正当な選択肢(障害者総合支援法施行規則 第12条の4)
- 「申請者が希望する場合」提出でき、市町村に拒む権限はない
- 体制不足を理由に安易にセルフへ誘導するのは問題(厚労省事務連絡 H26.2.27)
- 本人が希望しないのにセルフを求めるのも「厳に慎むべき」(相談支援Q&A 問50 R7.3.18)
- 国の「望まないセルフプランゼロ」目標は、本人が自ら選ぶセルフプランとは別物
- 明石市のセルフプラン率は令和6年3月末時点で0.0%。神戸市49.8%・西宮市38.7%との差は歴然
- 選ぶのは、利用者本人。その選択権を守ることが、障害福祉の自己決定の具体的な姿
参考資料
- 障害者総合支援法施行規則 第12条の4 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000100019
- 厚生労働省事務連絡「計画相談支援・障害児相談支援の体制整備を進めるに当たっての基本的考え方等について」(H26.2.27) https://www.rehab.go.jp/College/japanese/kenshu/2019/files/servicekanri_0302.pdf
- 厚生労働省「相談支援に関するQ&A」(8)セルフプラン 問48〜50(R7.3.18) https://www.city.tokushima.tokushima.jp/kenko_fukushi/jigyosha/shinsei.files/soudannqa070318.pdf
- 厚生労働省「各自治体の支給決定者(児)数とセルフプラン率(令和6年3月末時点)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001423625.pdf
- 厚生労働省「障害者相談支援事業の実施状況等について(令和6年調査)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_51943.html
- 社会保障審議会・障害者部会 資料(2025年10月1日) https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001570103.pdf </file_text>

