就労移行支援や自立訓練(生活訓練)の利用を考えているとき、あるいは一度利用を終えた後に再び支援が必要になったとき、「もう使えないのではないか」「期間が足りなかった」と感じて、相談することをためらってしまう方が少なくありません。
ネットでよく目にする誤解が3つあります。
- 「一生涯に一度しか使えない」
- 「通算2年間しか使えない」
- 「自治体によって使えるかどうかが変わる」
——これらはいずれも間違いです。
偉そうに言いながら、かつての僕自身も、これらの誤解を持っていた時期がありました。だからこそ、同じ勘違いで諦めてしまう方をひとりでも減らしたいと思い、今回は制度の実態と現場での実例を合わせてお伝えします。
誤解①「一生に一度しか使えない」
最もよく聞かれる誤解が、「就労移行支援や自立訓練(生活訓練)は一生に一度しか使えないのですか?」という質問です。
就労移行支援を利用して就職したものの、仕事が自分に合わず退職してしまう方は、残念ながらアイ・ワークスの卒業生にもいらっしゃいます。そうした方が「もう一度支援を受けたい」と思ったとき、「2回目は使えないはずだから相談するのをやめておこう」と最初から諦めてしまうケースがあります。
結論から言うと、2回目の利用は可能です。
障害者総合支援法の施行規則では、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)の利用期間は定められています。しかし、利用回数についての制限は定められていません。つまり、制度上は何度でも利用できる仕組みになっています。
1回目の利用で就職や自立に至り、その後また支援が必要になった場合も、改めて申請して利用を始めることができます。「一度使ったから終わり」ではないということを、まず知っておいていただきたいと思います。
誤解②「一生に通算2年間しか使えない」
「2回目も使えることはわかった。でも、就労移行や自立訓練は一生で通算2年間が上限なのでは?」という誤解も多く聞かれます。
具体的には、「1回目に2年間のうち12ヶ月を使ったなら、2回目は残りの12ヶ月しか使えない」という理解をされている方がいます。これも、かつての僕が持っていた誤解のひとつです。
これも間違いです。2回目の利用でも、原則として2年間が改めて与えられます。
法令で定められているのは「1回の利用期間の上限が原則2年間」ということです。1回目で使った期間が2回目から差し引かれるわけではありません。2回目の利用を申請した際には、自治体が改めて個別に審査を行い、その方の状況に応じて利用期間を決定します。
「1回目で1年使ったから、2回目は1年しかない」と思い込んで諦めていた方が、実は2年間フルで使える可能性があったというケースは、決して珍しくありません。
誤解③「自治体によって利用の可否や期間が変わる」
3つ目の誤解は、「自治体によって2回目の利用の可否や利用期間が変わるのでは?」というものです。
実はこれも、かつて僕自身が持っていた誤解です。「福祉が充実している明石市は2回目の2年間を認めてくれるけど、神戸市は認めてくれないのでは」と思い込んでいた時期がありました。神戸市さん、本当に申し訳ありませんでした(笑)。
結論として、自治体によって利用の可否や期間が変わることは、(原則)ありません。
就労移行支援も自立訓練(生活訓練)も、国が定めた障害者総合支援法に基づいて全国一律で提供されている福祉サービスです。制度の根拠となる法律は全国共通であるため、「A市は認めるがB市は認めない」という差は、原則として生じない仕組みになっています。
利用の可否や期間に違いが生じるとすれば、それは自治体の方針の違いではなく、申請者本人の状況に基づく個別の審査結果によるものです。
実際に、アイ・ワークスの神戸市在住の訓練生でも、2回目の利用で2年間が認められた例があります。「神戸市だから難しい」ということはありませんでした。住んでいる市区町村ではなく、ご自身の状況を正直に伝えた上で申請することが大切です。
例外的に利用期間が1年延長されるケース
1回目・2回目いずれも、原則の利用期間は2年間です。ただし、例外的に1年間の延長が認められる場合があります。
延長は自動的に認められるわけではなく、自治体による個別審査が必要です。では、実際にどのような方が延長を認められやすいのでしょうか。現場での経験をもとにお伝えします。
延長が認められやすい方とは
役所が延長を認める際に判断の根拠にするのは、「この方にもう少し時間をかければ、就職や自立の見通しが立つか?」という点です。
延長が認められやすいのは、2年間では就職や自立には至らなかったが、あと少しで目標に届きそうな状態にある方です。たとえば、就労移行であれば「体調や生活リズムは安定してきており、あと数ヶ月で就職活動に本格的に入れそう」、生活訓練であれば「日常生活の自立に向けて着実に前進しており、もう少し時間があれば安定した生活が見込める」といった状態です。
支援者から見て「先の見通しが立っている」と説明できる状態であることが、延長審査を通るための実質的な条件と言えます。
反対に、延長が認められにくいのは、2年が経過しても状況がほとんど変わらず、延長後の見通しも立てにくい方です。役所側も「延長することでどう変わるのか」という根拠を審査の場で示す必要があるため、見通しのない延長申請は通りにくい構造になっています。これは冷たい判断ではなく、限られた支援資源をより効果的に使うための制度設計でもあります。
申請のタイミングは「2ヶ月前」が目安
延長申請には適切なタイミングがあります。早すぎても、遅すぎてもうまくいきません。
たとえば、利用終了の6ヶ月前に「延長が必要かもしれない」と動き始めると、その後の6ヶ月の間に状況が変わる可能性があります。就職が決まったり、生活が安定したりして、結果的に延長が不要になるケースも十分あります。早い段階での延長申請は、本人にとっても「まだ終わりまで時間がある」という意識になりやすく、必ずしも良い影響を与えません。
一方、利用終了の直前に申請しようとしても、役所側が関係各所と審査を行うための時間が確保できず、手続きが間に合わないことがあります。
アイ・ワークスでは、利用終了の2ヶ月ほど前から、事業所から役所に対して現状報告と延長の打診を行うようにしています。この時点で「延長が必要な状態かどうか」の見立てを共有し、必要であれば書類や手続きの確認も同時に進めます。この流れが、審査をスムーズに進める上で現実的なタイミングです。
アイ・ワークスでの実例
就労移行支援で、直近で延長申請が認められた方の実例をご紹介します。
お二人とも、1年間の延長が認められたことで、本人が焦らず落ち着いて就職活動を進められるようになりました。結果として、延長期間に入ってから2ヶ月以内にそれぞれ就職が決まっています。「もう少し時間があれば」という状態で延長が認められたことが、最終的な就職という結果につながった例です。
生活訓練についても、就労移行ほど延長のハードルが低いわけではありませんが、延長が認められた例があります。延長期間を通じて、日常生活が少しずつ安定してきているところです。
延長制度は「誰でも使える」ものではありませんが、「あと少し」という状態にある方にとっては、大きな意味を持つ制度です。現在利用中の方で利用期間について不安のある方は、早めに担当スタッフにご相談ください。状況を一緒に整理した上で、延長申請が有効かどうかを判断します。
まとめ|利用期間についてご不明な点はご相談ください
今回ご紹介した3つの誤解を改めて整理します。
「一生涯に一度しか使えない」は間違いで、利用回数の制限は制度上定められていません。「通算2年間しか使えない」も間違いで、2回目の利用でも原則2年間が改めて審査されます。「自治体によって可否が変わる」も原則は間違いで、個人の状況による審査結果が判断を左右します。
これらの誤解によって、本来であれば使えるはずの支援をあきらめてしまうのは、非常にもったいないことです。「自分の場合はどうなるのか?」「もう一度利用できるのか?」と気になっている方は、まず一度ご相談ください。
ご本人の状況によって判断が変わることもありますので、個別にお話を聞かせていただいた上でご案内します。アイ・ワークスでは、見学・個別相談を無料で受け付けています。

